韓国ドラマを探していると、タイトルからその世界観を想像することはよくありますよね。「5時から7時までのジュヒ」というタイトルは、どこか詩的で、どこか切なさを感じさせます。この作品は、2022年に韓国で製作され、大病の可能性を宣告された大学教授の姿を描いた、非常に繊細なドラマです。日常のわずかな時間のなかに、人生の深みと複雑さを凝縮した作品と言えるでしょう。
『5時から7時までのジュヒ』はどこで見られる?
視聴を希望するファンの皆さんがまず知りたいのは、この作品がどのサービスで視聴できるかではないでしょうか。
このドラマは、「ケナは韓国が嫌いで」のゴンジェ監督による作品です。監督は、フランスの名作「5時から7時までのクレオ」をオマージュし、コロナ禍で仕事が減った俳優たちを集めて撮影を行いました。制作背景を知ると、作品の持つリアリティと温かみがより感じられるかもしれません。
大病の宣告から始まる、大学教授の2時間
主人公である大学教授のジュヒは、医師から乳がんの可能性が高いと宣告されます。この突然の宣告は、彼女の日常を一瞬にして揺るがし、それまで当たり前だった時間の価値と意味を問い直すきっかけとなります。作品は、この重い知らせを受けた彼女が、診察室を出てから約2時間のあいだに経験する出来事や思考に密着していきます。
研究室に戻ったジュヒが最初に行うのは、病気についての検索と、年金についての問い合わせです。この非常に現実的な描写は、誰もが直面するかもしれない不安や、制度への依存、そして未来への準備という、極めて個人的でありながら普遍的でもある瞬間を捉えています。
この大きな岐路に立つジュヒの前に、教え子のジュが訪ねてきます。調理師として働いた後で大学に入学したジュは、卒業後の将来に漠然とした不安を抱えています。大病を宣告された教師と、将来への不安を抱える学生。異なる立場でありながら、共に「これから」を見つめざるを得ない二人の対話が、物語に深みと温かみを加えていきます。
監督は、このような人生の岐路に立たされた40代の女性とその夫を主人公に、それを単なる悲劇でも喜劇でもなく、人間の「生」そのものを反芻する濃厚な時間として描き出そうとしています。その試みは、見る者に心地よい緊張感と同時に、どこか癒やしのようなものを与えてくれるでしょう。この2時間のなかで、ジュヒは何を見つめ、何を感じるのか。その静かなる旅路が、この作品の最大の見どころと言えるのです。
人生の機微を捉えた、チャン・ゴンジェ監督の世界観
この作品の根底にあるのは、チャン・ゴンジェ監督ならではの繊細な視点です。監督は、アニエス・ヴァルダの名作『5時から7時までのクレオ』へのオマージュとして本作を構想しました。ヴァルダの作品が女性の内面を刻々と描いたように、この作品もまた、限られた時間のなかで揺れ動く主人公の心象を丁寧にすくい上げます。
『ケナは韓国が嫌いで』の監督による、人生の一瞬に寄り添う物語
そして、この作品にはもう一つ、忘れてはならない制作背景があります。撮影が行われたのは、多くの活動が制限された時期でした。監督は、この困難な状況下で仕事を失った俳優たちを集め、撮影を行ったのです。この事実は、作品に込められたもう一つのメッセージを感じさせます。社会的な危機のなかで、それぞれが抱える不安や孤独。それらを芸術という形で昇華し、共に一つの作品を作り上げる営みそのものが、この映画には息づいています。
制作の背景にあるこうした思いは、画面から伝わってくる温かみや、役者たちの自然な演技のなかにも反映されていると言えるでしょう。単なる病気の物語ではなく、時代と人々の生の記録としての側面も、この作品の深みを形作っています。
悲劇でも喜劇でもない、人生の「反芻」の時間
大病の可能性を宣告された大学教授の姿を描くこの作品は、単なる病気の物語ではありません。作品の核心にあるのは、図らずも人生の最後を迎えることになった40代の女性とその夫が、悲劇でも喜劇でもない人生を反芻する濃厚な時間です。それは、観る者にも自らの生を見つめ直すきっかけを与えてくれる、深く静かな体験となります。
主人公のジュヒは、医師から乳がんの可能性が高いと告げられます。その宣告を受け、彼女は研究室で病気について検索し、年金について電話で問い合わせるなど、突然訪れた「人生の終わり」の可能性に対して、驚くほど現実的な行動を取ります。これは、大げさな感情表現やドラマチックな展開ではなく、日常の延長線上に訪れた危機に対する、一人の人間のリアルな反応として描かれています。
チャン・ゴンジェ監督は、この40代の夫婦の姿を通して、心地良い緊張感と癒やしを同時に観客に届けようとしています。絶望や希望といった単純な二分法に陥ることなく、人生の黄昏時に浮かび上がる、複雑で曖昧な感情の数々。それらを丁寧にすくい上げることで、誰もがどこかで感じる「生」の重さと儚さに、静かに寄り添う作品となっています。
やがて研究室を訪ねてくるのは、調理師として働いた後に大学に入学した4年生のジュです。彼女は将来に不安を感じており、教授であるジュヒに相談に来ます。ここで対比されるのは、人生の終盤を目前にした者と、人生の始まりに立つ者の視線です。この対話のなかで、お互いの立場を超えて「生きる」という営みそのものについて考える機会が生まれ、作品のテーマがさらに深まっていきます。
こうした物語の進め方は、監督がアニエス・ヴァルダの『5時から7時までのクレオ』をオマージュしたことにも通じます。限られた時間のなかで、主人公の内面の変化を繊細に描く手法は、観客を作品世界に引き込み、主人公とともに時間を過ごしているかのような没入感をもたらします。結果として、この作品は単に「観る」ものではなく、登場人物とともに人生を「味わい直す」時間となるのです。
作品の根底に流れる、人間への深いまなざし
この作品の魅力は、単なる病気の物語にとどまらないところにあります。人生の終わりを予期せずに突きつけられた人間の、揺れ動く心の機微を、余すところなく描き出している点です。医師からの宣告から、研究室でのインターネット検索、年金事務所への問い合わせに至るまで、主人公の行動は一見淡々としています。しかし、その一つひとつに、突然訪れた「死」という現実を受け止め、自分の人生を整理しようとする、切実でリアルな心理が込められています。
日常の中に潜む非日常的な瞬間を、静かに切り取る
監督は、このような劇的な出来事を、まるで日常の延長線上にあるかのように描きます。特別な音楽や演出で感情を煽るのではなく、静かな時間の流れの中で、主人公の内面の変化を浮かび上がらせます。これは、病気という非日常的な体験を、私たちの誰もが経験する「日常」という土台の上に置くことで、観客がより身近に、より深く感情移入できるようにするためです。この手法によって、作品は悲劇でも喜劇でもない、「人生そのもの」を反芻する濃厚な時間として、私たちの前に立ち現れるのです。
監督自身、この作品を「悲劇でも喜劇でもない人生を反芻する濃厚な時間」と表現しています。病気そのものよりも、その宣告がもたらす「生」への気づきや、残された時間との向き合い方に焦点を当てています。観客には、心地良い緊張感と癒やしが与えられると言えるでしょう。
さらに、この物語は主人公ジュヒだけのものではありません。調理師を経て大学に入学し、将来に不安を抱える4年生のジュが訪ねてくる場面は、物語に重要な対比をもたらします。人生の終盤と始まりを生きる二人の対話を通して、監督は「生きるとは何か」という普遍的な問いを、静かに、しかし力強く投げかけています。答えを提示するのではなく、観客一人ひとりが、主人公たちと共にその問いを考える時間を提供するのです。
このように、作品の根底には、人間の弱さや不安、そしてそれでも前を向こうとする強さに対する、監督の深いまなざしが流れています。それは、コロナ禍という困難な状況下で俳優たちと共に作品を作り上げたという制作背景にも通じる、人間への信頼と共感に満ちたまなざしと言えるでしょう。
『5時から7時までのジュヒ』が語るもの
大病の可能性を告げられた女性が、残された時間とどのように向き合うのか。本作は、「生」と「死」という普遍的なテーマを、静かでありながら心に深く響く方法で描き出します。悲劇でも喜劇でもない、その中間にある「人生の反芻」こそが、この物語の核心です。
チャン・ゴンジェ監督によるこの作品は、アニエス・ヴァルダの『5時から7時までのクレオ』へのオマージュとされています。コロナ禍という困難な状況下で仕事を失った俳優たちを集めて撮影が行われた背景には、監督の人間への深い信頼と共感が込められていると言えるでしょう。
主人公の大学教授・ジュヒが直面するのは、突然訪れた「終わり」の可能性です。しかし作品は、その絶望に沈み込むことなく、日常の些細な行為や人との対話を通して、「生きる」ことの意味を問い直す時間を紡ぎ出します。調理師を経て大学に入学し、将来に不安を抱える学生・ジュとの対話は、人生の終盤と始まりを対比させ、観客にもさまざまな思いを巡らせるきっかけを与えます。
あなたなら、残された時間とどう向き合いますか?
監督は答えを提示するのではなく、観客一人ひとりに問いを託します。診断結果を待つ2時間という限られた時間のなかで、主人公が感じ、考え、行動するすべてが、私たち自身の日々の過ごし方や、大切なものを見つめ直すきっかけとなるのです。この作品が提供するのは、心地良い緊張感と癒やしに満ちた、濃密な体験です。2022年に韓国で制作されたこの作品は、時間に縛られた私たち現代人に、静かな気づきをもたらしてくれるでしょう。
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