miss Aスジ、「国民の初恋?私にとって越えねばならない壁です」

これからが楽しみな“女優”スジ
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アイドル歌手の演技挑戦をまだ否定的に見た2012年、韓国映画界はあるガールズグループからの女優の登場に熱狂した。その映画の名前は『建築学概論』、そしてその女優の名前はmiss Aのメンバースジだった。
スジが『建築学概論』で演じたソヨンは、軽快で溌刺としたまだ10代の少女の初々しさで観客の心を揺るがし、映画は全国400万人の観客を動員する大ヒットを収めて“国民の初恋”という名称まで得ることになった。『建築学概論』以降、3年7ヶ月ぶりに映画『桃李花歌』を通じてスクリーンに戻ってきたスジに会った。

◆「国民の初恋、私には越えねばならない壁です」
女優にとって最も危険なのはひとつ作品でのキャラクターが過度に強烈で、他の作品に出演してもそのイメージから抜け出せないことだ。短期的にはその女優を代表する明快なキャラクターによって存在感が引き立って見えるが、時間が経つとその膨らみ過ぎたイメージはその女優そのものになって、結局過度なイメージ消費で疲労感を呼び起こす。それで女優は常に他の演技、新しい演技を探して長い空白期間を持つことになる。
これは『建築学概論』で“国民の初恋”という修飾語がついたスジにとってもやはり同じだった。『桃李花歌』がやっと2作品目の映画で、女優というよりはまだ歌手のイメージがさらに強いが、スジはすでに自身のイメージが“国民の初恋”に固定されることを恐れている。女優としてその場ではなく、さらに遠い未来を見通しているのだ。

◆「貪欲?根性?フィーリング?そういった気が強い面」
スジが出演した映画『桃李花歌』は朝鮮初の女流名唱(歌い手)だった“チン・チェソン”の人生を映画化した作品だ。朝鮮時代末期、母が早くに亡くなり、妓生(=芸者)の家の女中として生きていた彼女は偶然名唱シン・ジェヒョ(リュ・スンリョン)のパンソリ(朝鮮の伝統的民俗芸能。19世紀に朝鮮で人気のあった音楽であり、口承文芸のひとつ)を見て、パンソリをやりたがる。しかし当時は女性がパンソリをすることはできなかった時代であり、彼女は男装をしながらシン・ジェヒョの下に入ってパンソリを習おうとする。

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「チン・チェソンは非常に気が強い女の子です。ところで私もかなり気が強いです。もちろんチン・チェソンの時代的な状況や背景は今の私と比較することはできませんが、チン・チェソンのように貪欲?根性?フィーリング?そういった気の強い面がちょっと私にもあります。演技をするのもそうで、私の記憶を引き出して演技をしようとしました。」

「私は褒められると伸びて自信がつくタイプです。称賛されると演技をしながらも気楽に積極的にアイディアも出して、出てこないと思った部分のアイディアまで飛び出したりします。ところが良くない言葉を聞いたり否定されると毒気づいてしまいます。『そう、なら今から私がどうするか見てなさい。私が何が何でも貪欲にやり遂げてみせるから。』こういう風に。」

「『桃李花歌』の撮影中に、本来台本にあったシーンのひとつが突然撮影現場でなくなりました。監督が『この場面はあえて必要なわけではないが、私が感情を爆発できなければあえて使う必要がない場面だから抜いた』と言いました。それで私が『このシーンを演じる方がもっと説得できると思う』と言うと、監督が『なくてもかまわない場面だから気楽にしろ』とおっしゃって、私は負けん気がでてきて『また一回見せなければならないね』という気がしました。ハハ。」

その話のようにスジは格別なフィーリングと根性を見せる。あらゆるガールズグループのなかでもトップの美貌を誇るという賛辞を受けた彼女が、顔にススをつけたみすぼらしい姿で登場し、泳げないのに寒い気温のなかで氷のように冷たい水の中に潜水して再び出てくるシーンも黙々と何度も演じた。この程度もやらない女優がどこにいるのかと言われるだろうが、比較的長くない演技経歴にこれをやり遂げる女優もそれほどありふれていない。

「男装をしようとひげも付けて顔にススを塗りましたが、撮影現場ではひげがさらによく似合うという言葉まで聞きました。初めはそんな自分の姿に慣れなくて鏡を見てびっくりしていましが、後半にはそんな扮装をした自分の姿がもっと美しく見えて、チン・チェソンという役にもさらに入り込んで集中できました。美しく見せようという考えもせずに元々私がチン・チェソンだったようにです。」

「映画で沈清歌を歌いながら水に飛び込む場面が2回出て来ますが、私は泳げないのでそのシーンはスタントさんが代って下さいました。そして映画で削除されましたが、水に飛び込んだ私が水の中から出る場面がありました。その場面は顔が直接出てくる場面だったのでとても長く撮りました。水の中から出て喜ぶ表情にならねばならず、長時間撮影をしたけど、後半は体に感覚が無くなって足首が切られると思いました。ところが監督がその場面を映画からカットしたので、Eメールでその場面を送って欲しいとお願いしました。」

『建築学概論』と『桃李花歌』。この2作品の映画だけでスジという女優はどんな女優だと定義するのはまだ早い。スジが見せた演技は期待以上に立派だったが、それでもすでに圧倒的な演技力を見せている女優たちと比較するには、まだあまりにも下手で至らない点も多い。しかし現在スジは映画で安定的に主役を演じるレベルに達した20代女優がそれほど多くない韓国映画界で明らかに目につく存在である。そして彼女自身も演技の醍醐味を知りつつあり、女優としてさらに一歩成長しようとしている。